「賞罰で勉強させる」は逆効果?モチベーションを下げる外的調整の落とし穴

イントロダクション:前回のおさらいと「外的調整」の問題

こんにちは。Happy Education Lab.の宮脇です。

 

前回のブログでは、モチベーションの4つの段階についてお話ししました。そして、結果ではなく過程を褒めることの大切さについても触れましたね。今日はその逆、つまり「やってはいけないこと」に焦点を当てていきます。

 

改めて確認すると、モチベーションの4つの段階は、1つ目が「外的調整」、2つ目が「義務感的調整」、3つ目が「同一化的調整」、そして4つ目が「内的調整」でした。

 

この中で最も望ましいのが「内的調整」です。これは勉強そのものに価値を感じ、面白いと思うから勉強するという状態でした。一方で、最も望ましくないのが「外的調整」なのです。

 

外的調整とは、周りからの賞罰を目的に勉強する状態を指します。例えば「テストで90点を取ったらお小遣いをあげる」とか、「何点以下だったらご飯抜きよ」といった、勉強の結果に対して賞罰を与えるモチベーションの上げ方ですね。

 

今日は、この外的調整がなぜ問題なのか、もう少し深く掘り下げてお話ししたいと思います。

外的調整が抱える2つの大きな欠点

外的調整には、大きく分けて2つの欠点があります。

 

まず1つ目は、そもそも「やらされている感」が強いため、成果が出にくいということです。本人が心から勉強したいと思っているわけではなく、ご褒美や罰を避けるためだけに勉強しているわけですから、集中力も身に入り方も違ってきますよね。

 

そして2つ目、これが本当に深刻なのですが、賞罰をやめると勉強もやめてしまうのです。ご褒美をあげるのをやめても勉強しなくなりますし、罰を与えることをやめても勉強しなくなります。しかも驚くべきことに、その罰を与える前よりもモチベーションが下がるということが、心理学の研究で明らかになっているのです。

これは「アンダーマイニング効果」として知られる現象で、アメリカの心理学者デシとライアンの研究によって明らかにされました。彼らの実験では、絵を描くのが好きな子どもたちに報酬を与えると、報酬がなくなった後は以前よりも絵を描かなくなったという結果が出ています。

 

ですから、私は基本的に保護者の方から相談を受けるときに、「ご褒美をあげる方式はやめてください」とお伝えしています。そういった方法に頼ると、長い目で見たときにモチベーションを下げる時期を作ってしまうからです。目先の結果は出るかもしれませんが、結局は子どもの学習意欲を削いでしまうのですよ。

他塾の賞罰システムに感じる懸念

時々ですね、塾業界の広告や宣伝を見聞きして、正直びっくりすることがあります。

 

「テストで何点以上取ったらポイントをあげる」というご褒美制度や、小テストで最下位だった生徒に罰ゲームを課すような塾があるのです。例えば私が聞いた話では、最下位の子がお面をかぶって恥ずかしい格好でコンビニに買い物に行かされる、なんていうものもありました。

 

その時は集団のノリで楽しいかもしれません。でも、罰を与えられた子にとっては、心に傷が残り、トラウマになることもあるでしょう。たとえ本人が楽しんでいるように見えても、これは勉強そのものの楽しさに気づかせる方法ではありません。そして心理学的には、長期的に勉強への意欲を減退させてしまうということが分かっているのです。

 

多分、そういった賞罰を与える塾さんは、こうした心理学的な知見をご存じないのだろうなと思いながら、私はちょっとヒヤヒヤしながら見ています。もちろん、何らかの考えがあってやられていることかもしれませんが、私は基本的にそういったことはしません。そして実際に、そういったことをしない方が、子どもたちは勉強そのものの価値や楽しさに気づきやすいなと実感しています。

本当に大切なのは「勉強の楽しさ」に気づかせること

「テストで良い点を取らないと内申点が大変だから」とか、「高校入試で良い高校に行けなくなるから」とか、もちろんそういった現実はあります。私もそれを否定するつもりはありません。

 

でも、子どもたちに勉強の楽しさを知ってもらうということが、実は一番の成績アップのコツだったりするのです。

 

1つ前、2つ前のブログでお伝えしたように、「よく頑張ったね」「ここまでできるようになったんだね」と、子どもたちが頑張っているその過程や小さな成長を具体的に褒めていただくということが大切なのですね。賞罰に頼らず、そうした温かい声かけを続けていくことで、子どもたちは自然と勉強そのものの価値に気づいていくのです。

 

ぜひ心に留めておいていただけたらと思います。

【この記事を書いた人】

宮脇慎也(保護者向け教育コーチ)

 

・20年以上の教育現場経験

・700組以上の親子面談実績  

・中学生の偏差値を平均7ポイント向上させた実績

・進学空間Move塾長として地域教育に貢献

・2030年までに1万組の親子の成長をサポートすることを目標

 

広島大学大学院社会科学研究科博士課程後期修了。2013年から広島市で学習塾を運営し、個別演習型指導で多くの生徒の学力向上を実現。近年はキャリア教育にも注力し、社会人講師を招いた講演会を多数主催。

 

Happy Education Lab. 運営者